たま@uratxx6月13日
夢を見た。天使の夢だ。愛してると言ったら彼は酷く驚いていつも以上に目尻を下げた。心と連動する小さい翼が真っ白な羽根を撒き散らし視界を覆う。そうして思わず目を閉じた私に彼は優しく口付けるのだ。とてもとても幸せな夢。だけど夢はここで終わる。目を開ければ彼は居ない #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月14日
泣きながら朝を迎えた。まだ自分は涙を流す程彼が愛しかった。これは試練なのだ、幸せになる為の試練。だからもうすぐ帰ってくる。天使は人間を幸せにするのだろう?呼鈴が鳴ってドアを開けると彼が笑っていて…そんな事ばかり考えていたから聞こえた呼鈴が夢か現実か解らなかった #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月14日
ロイは息を飲んだ。幻聴でなければ今のは確かに呼鈴の音だった。朝のこんな時間に部屋にくる友人はいない。そもそも友人と言える人間は今の彼には存在しなかった。再び呼鈴が鳴る。悩むより先に体が動いていた。玄関へ走りドアを開ける。目の前に黒いスーツの男が立っていた #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月15日
初めましてと口元だけで笑うその男は明らかに堅気ではなかったがロイにはこの手の男に免疫があった「君は…天使か?」男は驚き感嘆する「初対面でバレたのは初めてですよ」なんせ見てくれがこれなんでと男は肩を竦める。君以上に柄の悪い天使を知ってると言うと大きく吹き出した #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月16日
違いねえとくつくつ笑った天使は改めてロイの方に向き直した。警戒を解いた、そんな顔だ「ブレダと言います、マスタングさん。ツレが迷惑かけました」今度はロイが警戒する。天使の友人に心当たりなどひとりしかいない。「ハボック…」「そうです。奴は俺のツレで…元同僚です」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月16日
「元…?」天使にも転勤があるのかと訊かれブレダは苦笑まじりに首を振る「そんなもんありません、ハボックはダテンしたんです」聞き慣れない言葉に戸惑うロイにブレダは宥めるように告げる「堕天、天から堕ちる、つまりあいつはもう天使じゃないんです」ロイは言葉を失った。 #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月17日
「まさか私のせいで…」「いいえ、あんたのせいじゃない」ブレダは答える。まるでロイの言葉を予測していたように。「正直人間と天使が恋仲になる事はよくあるんです。異性間でも同性間でも。いつも寄り添い自分の幸せを祈る天使に人間が惹かれるのは仕方のない事ですから。 #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月17日
しかし天使の方が熱を上げるとなると話は別です。堕天する理由は2つ、神に反するか己に反するか。天使は人間を幸せにする為だけに存在するのに自分が幸せになるなど本末転倒も甚だしい。ハボはあんたに恋をしそして幸せと感じた。天使である己に反した。堕天は然るべき処置です」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月18日
「何が然るべき処置だ、天使だって幸せになる資格はあるだろ…?」「ありません」目の前の男は断言する「我々にそんな資格はないのです。天使も幸せになれというのは、人間の勝手な言い分だ」それこそ天使に溺れた人間の。ロイはそれ以上何も言えなかった。ただ涙が溢れていた。 #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月19日
ハンカチを渡され、そこで自分が泣いてる事に気付いたらしいロイは素直にそれを受け取った「それで君は私を慰めに来たのか。天使はアフターサービスもいいんだな」冗談まじりに言うとこんなの天使業を逸脱してますよとブレダは苦笑する「担当以外の人間に会うのは厳罰モンです」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月19日
「ならどうして」「会いたかったんです。あいつが惚れた人間に。あいつ天使失格だけど大事なダチなんで」ブレダは照れ臭そうに笑った。「それじゃあ」「待ってくれ」「はい?」「あの…やはり私は天使にも幸せになる資格はあると思う。君の言う、人間の勝手な言い分かもしれないが #一日一ハボロイ
たま@uratxx6月19日
ハボックだけじゃない、私は君にも幸せになって欲しいと思ってるよ」天使は驚き、そして笑顔で会釈をした「直に別の者が来ます。そいつならきっとあんたを幸せにしてくれるでしょう」「…期待しないで待ってるよ 」「それがいい」面倒見の良い強面の天使は笑いながら消えていった#一日一ハボロイ
●天使ハボ3へ続く
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