たま@uratxx8月24日
そして始まるパピヨンパロ。ロイはアメストリス国の皇子で第一王位継承者。国交中に戦争が始まり訪問先の敵国イシュヴァールで逃亡生活をおくる。アメストリス人の証である紫の瞳を持つ為混血の孤児と偽っていたがある日スラム街で絡んできた男を刺し殺してしまい少年院に送られる。♯一日一ハボロイ
たま@uratxx8月24日
雑居房に入るなり感じた悪寒。独居房はないのかと訊ねるロイに看守は鼻で笑った「なんて顔だ、別に動物園の檻に入れるんじゃないんだぜ?お嬢さん」「待ってくれ!」これなら動物園の方がマシだ。看守を呼び止めようとするロイの肩を一人の男が掴んだ「ここより独居房のがいいって?」♯一日一ハボロイ
たま@uratxx8月24日
「それじゃあここから出してやるよ」問題を起こせば直ぐに独居房行きだ、と男は笑った。体を密着させロイの顔に手を這わせる 「おまえ、肌が白いな。頬もピンクで本当に女みたいだ」もっと見せろと男がシャツを掴んだ瞬間、けたたましい叫び声が雑居房に響いた。♯一日一ハボロイ
たま@uratxx8月24日
「あたたたたた!!」男は叫びながら苦痛に顔を歪ませる。ロイに絡んできた男はいつの間にか別の男に腕を締め上げられていた「離せジャクリーン!腕がっ!」ロイは目を見開いた。ジャクリーンと呼ばれたその男は、以前自分に使えていた従者に瓜二つだったのだ #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月24日
「そーいうことを人前でするんじゃねーよ。見てるこっちが勃つだろ」更に強く締め上げたジャクリーンは男が降参したと同時に腕を解放した。言葉を失うロイに、今のはあんたも悪いんだからなと諭した彼は、嘲笑しながら呟く「ま、随分とお育ちが良さそうだからしょーがないか」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月25日
仲間のもとに戻る男を目で追いながらロイは思った。違う…。もしかしたら彼はあいつじゃないか、そんな期待は絶対的な相違点によって失った。右腕。あいつは故郷の戦争で右腕をなくし自分の前から去っていったのだ。あいつ、ハボックはロイの忠実な従者であり最強の戦士だった。 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月25日
ロイが収容されている房の囚人は科学レーザー用のミラー作成を従事していた。なぜか初日に襲ってきたブレダが新入りであるロイの世話をし始め、最初は疑っていたロイも徐々に彼に打ち解けていった。実はブレダを仕向けたのはジャクリーンなのだがその事をロイは知る由もなかった #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月25日
仕事にも慣れ小柄という理由で細かい作業も任されるようになったロイ。その時見つけた小さな工具を作業服のポケットに忍ばせた。作業服を脱いだ後服装点検がある。その後でこっそり取りに戻れば…。看守に促され慌てて作業服を壁にかけた瞬間、無情にもその工具が床に落ちた #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月26日
しまった。そう思った時にはもう遅かった。咄嗟に両手で覆ったが作業場に警報が鳴り響く。出口付近にいた看守が近付いてきた。「おいお前!」観念して顔を上げると看守も他の囚人達も此方を見ていない。彼らの視線の先はーー…「工具を持ち出したのか、ジャクリーン!」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月26日
「なんでお前が」ジャクリーンの足元に落ちている工具を拾い、看守は問う「ついうっかり」「うっかりだと?」「ええ」ジャクリーンは両手を上げにこりと笑った「点検の他にドアにも高性能センサーがいつもついていて、持ち出すのが不可能だってこと、すっかり忘れてたんスよ」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月26日
「とにかく来い」看守はジャクリーンの腕を拘束し未だ鳴り響く警報に声を上げた「センサーを止めろ!」耳障りな音が消えジャクリーンは連行されたが一瞬の隙をついてロイに一瞥を投げた『今だ』そう言われた気がした。そうだ今なら。ロイは素早く工具を懐に入れ、作業場を後にした#一日一ハボロイ
たま@uratxx8月26日
「どうしたジャクリーン、お前がこんなミスを犯すなんて」軍服の男は机に足を投げ出しニヤニヤと笑う「あんたが暇そうだから遊びに来てやったんだよ」囚人の横柄な態度に男はふんと鼻を鳴らした「ならば、お望みの罰をくれてやろう。追加労働なんかじゃつまんねえだろ?」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月26日
「30気圧の重力地獄かそれとも100℃の熱地獄か」さも愉快そうに指をおる男にジャクリーンは笑顔で申し出た「出来るなら、研究中の『プラナリア』の餌食に」途端に男は顔色を変える「何…?」「軍が生物兵器としてこのプラントで増殖させてる無性生殖のプラナリアだよ」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
ガッ。 警棒で容赦なく殴られジャクリーンの唇から血が流れる。それでも恐怖など微塵も感じない彼の態度が更に男を苛つかせた「どこから聞いたか知らんが、言われなくても餌にしてやるよ」胸ぐらを掴み無理矢理机に押さえ付けると男は再び警棒を構えた「その前にお仕置きだな」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
「その台詞、そのまんま返してやるよ」「何?」その瞬間、二人の背後から悲鳴が聞こえた「プラナリアだ!」全長20㎝ほどのプラナリアが見張りの看守らの足元に何百といた「なぜこんな所に!」あっという間に囲まれ足を噛まれた看守が絶叫する「落ち着け!今…」「ムダだよ」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
「知ってるだろ?熱にも薬品にも強く切れば増える。おまけに肉食性。そいつらは敵なしだ」ニヤリと笑い体を起こしたジャクリーンは手錠を素手で引き千切った「バ、バケモノ!」 驚愕する看守らを尻目に彼は傷付いた手首をぺろりと舐め、恐怖で顔を歪める目の前の男の首を掴んだ #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
「誰だーダイエットなんて虚しいもんしてる奴はー」残っている食事にひとりの少年が声を上げた「ジャクリーンだよ」別の少年が答え、にわかに食堂が騒ついた「まだブチ込まれてるのか」「にしても長えよな?」そして全員がひとつの答えに行き着く「まさかあいつも消えたんじゃ…」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
この宇宙工場は20年前に一度閉鎖されていた。閉鎖理由は人間の消失。ある日突然人が消えるのだ。しかしアメストリスと冷戦状態に陥り工場の再開に踏み切った。ただし、少年院として。犯罪を犯した者が消えよう死のうが問題ない、それが国の考えだった。 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
『ーーええ、瞳の色は紫。名は違いますが彼がお探しの人物かと…』端末機のモニターにはロイの姿が写し出されていた。イシュヴァールの最高責任者であるブラッドレイは口を開く「殺せ」『は?』「疑いがあるなら殺せ。どうせそこで人が消えるのは日常茶飯事だろ?ハクロ将軍」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
他の仕事がある、そう言われてロイが案内されたのは院長室だった「ハクロ将軍、つれて参りました」看守が敬礼をし、椅子から立ち上がったハクロが口を開く「よけろ」看守が離れた瞬間ロイも身を屈める。レーザーが走ったのはそれと同時だった「噂通り逃げ足が早いな、ロイ皇子」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
ロイは机の下に潜り込み息を殺した 「今さら逃げ隠れしてどうするのです。あなたはもう死んでるのに」ハクロの言葉が胸に突き刺さる。確かに自分が生きる意味などとうの昔に失った。だけど…「出てきなさい、今なら楽に殺してあげますよ」静まりかえる室内に非情な溜め息が響いた #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
「回転させろ」ハクロの命令で部屋がゆっくりと傾いていった。辛うじて転落を回避したがそう長くはもたないだろう。下を見れば何かがウヨウヨと動いている。プラナリアだ。必死で床の境目を掴むロイにハクロが追い討ちをかけた「今日アメストリスは首都を明け渡しました」 #一日一ハボロイ
たま@uratxx8月27日
「生きて帰ってどうなります。もうあなたを皇子として迎える国はないのですよ」もう、どこにも…。ロイの手が床から離れ、小さな体が闇に吸い込まれていった。その全てを見届けたハクロは満足気に命令を下す「シェルターを閉めろ」お気の毒に皇子、帰るべき国も土地も、人もーー… #一日一ハボロイ
パピヨンパロ2に続く